Rock名盤解説 番外編 80年代のロックについて

1980年代の音楽シーンは、産業化とジャンルの細分化が70年代よりも深刻化していきました。ハードロックからメタルが生まれ、更にデスメタルになるといったような、訳のわからない区分が出てきました。70年代のハードロックの時代にもあったことなのですが、一つの産業として定着してしまったロックは、顧客のニーズに合わせて多ジャンル化していきました。


ジャンルの細分化とMTVの弊害

ハードロックとメタルの区分は、非常に曖昧です。音楽的な発展性があったのかと聞かれるとそれほどのことはなく、テンポの速さと過激さを増したファッションくらいしか思いつきません。

80年代に入ってシンセサイザーによるリフを多用するバンドが増えてきました。デュラン・デュランや、YMOなどがそうです。ニューウェーブだとか、ニューロマンティックとか呼ばれていました。

そして、マイケル・ジャクソンなどがMTVでビデオクリップを流すようになると、視覚的効果を重視した売り方が過剰になっていきます。70年代にもビデオクリップはありましたが、80年代のMTVほど露骨ではありませんでした。生のライブより映像が重視されるようになると、音楽的本質からどんどん乖離していきます。

人種や文化圏による多チャンネル化

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元々、ロックを含むポピュラー音楽には、日本人が思っているよりも、人種や国や地方によって好みが分かれているものでした。ロックが誕生した1950年代では、ブルースやロックは黒人のプレイヤーが中心でした。しかし、1960年代では白人のミュージシャンがロックを演奏するようになり、ヒッピー層の熱心な後押しもあって、白人が好んで聞く音楽になっていったのです。


1950年~1960年代は、フォークやカントリーなどが、白人の音楽であり、黒人がブルースといった区分だったのです。その垣根を壊したロックは素晴らしく、世界中に広まりました。

しかし、80年代になると黒人のブルースは、一部の層にしか受け入れられなくなり、ソウルやヒップホップなどが黒人音楽の主流となり、白人の音楽とは異なるジャンルとして確立されました。

1960年代でもアメリカ南部のロックをサザンロックといっていましたが、地方による個性のような扱いでした。しかし、産業化しリスナーの数が増加するに伴って、特色自体がジャンル化してしまったのです。

ハードコアは都市部で誕生し、パンクのより先鋭化したものです。昔なら特色程度で語られるのですが、前述したデスメタル同様、ジャンル化されました。

元は一つのジャンルであったロックは、80年代には、数えるのが憚られるほど多ジャンル化しました。人種的な違いや、文化圏の違いで分割されるようになっていったのです。60年代には、ロックという新しいムーブメントで世界中の人々をつなげたものが、皮肉なことに80年代では大きく分裂してしまったわけです。

複雑化し難解になったロック

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80年代のもう一つの特徴として、クラシックのように複雑化したギターの手法が挙げられます。70年代のハードロックから徐々にテクニシャン系のギタリストが増えてきました。80年代になると、ハーモニックマイナーP5とかいったクラシックのようなスケールまでロックに持ち込まれるようになったのです。

ロックは、元来ブルースをベースにしています。音楽教育を専門に受けていない労働者階級でもギターを弾けるようなシンプルさがあったからこそ、広まったのです。

確かにテクニックはあった方がいいのですが、物事には限度というものがあります。大衆のために生まれたものを全否定するかのような発展の仕方は、根本的な矛盾をはらんでいました。

80年代は、ロックにとって混沌と分裂の時代といえます。70年代から出てきた産業化の弊害が形となってきました。1990年代になると、グランジやオルタナティブが、この流れを堰き止めようとします。ロック名盤解説、これからは90年代編に突入します。

 

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