KULA SHAKERは、グラストンベリーの新人用ステージに出演したことと、マンチェスターのバンドコンテストでの演奏が評価されたことでメジャーデビューを果たしたバンドです。
■グラストンベリーの申し子
グラストンベリーフェスティバルとは、1970年から続いているイングランドの音楽フェスティバルです。日本のフジロックが参考にした大規模なフェスティバルでロックシーンに多大な影響を与えていました。
クーラ・シェイカーは、1995年にEP盤の”GRATEFUL WHEN YOU’RE DEAD“を発表し、その数ヶ月後にファーストアルバム“K”をリリースしました。Kは、プラチナディスクとなるほどの売り上げを記録し、クーラ・シェイカーはロックスターとなったのです。
僕がクーラ・シェイカーのライブ映像を初めて見たのは、この頃のグラストンベリーの本ステージだと思います。ファーストアルバムKの曲が多かったので、1995~1997年頃のライブでしょう。
衛星放送で見たライブで惚れこんで、アルバムやらEPをまとめて買いました。ライブ中に雨が降ってきて、ビートルズの”Rain”を即興で演奏していたのもカッコ良かったです!
■デビューアルバムにして最高傑作 K
出典 https://www.amazon.co.jp/
バンドにとって旬な時期というのは必ずあります。クーラ・シェイカーにとっては、デビューした1995年~1997年くらいまでだったのではないでしょうか。
ギター・ボーカルでバンドの中核ともいえるクリスピアン・ミルズが、東洋思想や神秘主義かぶれなのは有名な話です。1990年代後半のナチス発言は、どうやら卍(マンジはナチスのハーケンクロイツの逆向き)に対する話をマスコミが曲解したことがきっかけのようです。
ヨーロッパでは、ハーケンクロイツは、悪夢の象徴ともいえるので、クリスピアン・ミルズも自分の影響力を考慮して発言するべきだったとは思います。それでも当時のバッシングは常軌を逸していました。
セカンド・アルバムである“Peasants, Pigs & Astronauts”は出来がそれほど良くなかったのに加えて、ナチス発言問題が重なり、クーラ・シェイカーは1999年に解散してしまいました。
この1995~1997年くらいがバンドにとってピークの時期で、ジョー・サウスのカバー曲HUSH(日本ではEP盤)などもいい出来のスタジオ録音でした。デビューアルバムKが最高傑作なのは、こういった理由によってです。
2006年に再結成したクーラ・シェイカーが、“K 2.0”というアルバムを最近発表(2016年)しましたが、このアルバムは全盛期に近い出来なので、Kが気に入ったのならぜひ聴いてみてください。
■K解説
Kのサウンドの特徴は、サイケデリックなテイストの60年代風ロックということにつきます。サイケとは、60年代に流行した薬物を用いて東洋系(インド音楽など)のテイストを持ち込んだ音楽のことです。解りやすい例として、ビートルズのリボルバーや、シド・バレット時代のピンク・フロイドなどが挙げられます。
クリスピアン・ミルズは、10週間にわたるインド旅行など、東洋音楽や思想に傾倒していました。そのため、Kではシタールやタンブーラなどインドの楽器を用いた曲が多く存在します。
ビートルズのジョージ・ハリソンが、インドのシタール奏者ラヴィ・シャンカールの弟子だったことは有名です。クリスピアン・ミルズのアプローチも60年代サイケに近いものを感じます。
1曲目は、ノリのいいHEY DUDEです。シングルカットされたことでも解るように、このアルバムの中でも1.2を争う出来の曲です。4曲目は、インドテイスト全開のGOVINDAで、スライドギターにゆったりと幻想的な雰囲気があります。
個人的には、7曲目のINTO THE DEEPが明るめの曲で気に入っています。意外とこういうキャッチーな曲もとり混ぜるからクーラ・シェイカーは面白いです。8曲目のSLEEPING JIVAは、9曲目の名曲TATTVAへの繋ぎです。
TATTVAは、これぞクーラ・シェイカーといったサイケ全開の曲で、ここからEPのタイトル曲GRATEFUL WHEN YOU’RE DEAD/JERRY WAS THEREに行く流れは、このアルバムのハイライトです。
グレイトフル・デッドは60年代のアメリカのバンドで、タイトルにするほどの影響をクリスピアン・ミルズに与えています。この曲は、前半部分と後半ではアップテンポからゆったりした曲調に変わるので、曲名が長くなっています。ジェリーとは、グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアのことです。
11曲目の303もノリのいい曲で気に入ってます。EP盤GRATEFUL WHEN YOU’RE DEADに収録されているUNDER THE HAMMERに比肩しうる曲です。
Kは勢いのあるアルバムだと思います。ファーストアルバムのお手本のような、荒々しい感じが出た傑作アルバムです。バラードは少なく、その手の曲は求めてはいけません(笑)。
作詞、作曲はクリスピアン・ミルズがクレジットされることが多いですが、ベースのアロンザ・ベヴァンも共同クレジットされています。
アロンザ・ベヴァンのベースは、しっかりとした技術のあるフィンガーピッキングスタイルが特徴で、バンドの屋台骨という側面があります。前述のグラストンベリーのライブでは、アロンザのコーラスマイクのボリュームが低すぎて聞こえにくかったことを覚えています。
ドラマーは、ポール・ウィンターハートで、アロンザとしっかりとしたリズム隊を形成しています。キーボードにジェイ・ダーリントンという配置は、ディープ・パープルを彷彿させる音の厚みをバンドにもたらしていました。ちなみに、ジェイ・ダーリントンは、バンド解散後、オアシスのキーボードとして活躍していました。
■クリスピアン・ミルズの使用機材について
この頃のクリスピアン・ミルズは、フェンダーのストラトキャスターがメインで、サブにゴールドトップのレスポールを使用していました。ラージヘッドにメイプル指板の典型的な70年代ストラトで、結構太い音が出ています。
アンプはおそらく、フェンダーかサンのザ・ツインだったと思います(うろ覚え)。エフェクトでは、ワウも多用していてサイケ感満載(笑)です。
リズムギターから、オブリ、リードをバランスよく弾くスタイルなので、ストラトはぴったりなチョイスです。クーラ・シェイカーには、ストラトならではのカッティングの切れ味や、リードでブーストした時の音の太さなど印象的なギターのトーンが多いです。
1990年代後半までは、クリスピアン・ミルズのようなギターヒーローがいました。最近では、ギターロックは廃れていきましたが、1990年代には胸を熱くさせるロックギタリストが存在していたのです。
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