MotoGPのマシンを紹介!ヤマハ YZR-M1とスズキ GSX-RR

MotoGPのマシン紹介、後編は直列(並列)4気筒勢の紹介です。ヤマハ YZR-M1と、スズキ GSX-RRはハンドリングに定評のあるバイクです。V4勢との違いや、特徴など解りやすく解説します。

目次 この記事の内容

  • ヤマハ YZR-M1
  • スズキ GSX-RR
  • 市販車のフィードバックがしやすい直4マシン

ヤマハ YZR-M1

出典 https://race.yamaha-motor.co.jp/ 2020年モデルのYZR-M1

2002年にロードレース世界選手権が、2ストロークの500ccから4ストローク990ccのMotoGPへと移行しました。ヤマハは、YZR500の後継バイクとして、YZR-M1という4ストローク車を開発し、これまでのV4から並列(直列)4気筒のエンジンレイアウトに変更しました。

ヤマハは、長年のライバルであるホンダが、ストレートスピードで優位なのに対して、マシンのコーナリングでの操縦性の高さが特徴でした。YZR-M1の開発には、コーナリングでの優位性を主眼にしていました。

しかし、ホンダのRC211Vに乗るバレンティーノ・ロッシ選手の前に勝てないシーズンを続きました。転機は2004年のロッシ選手のヤマハ移籍で、ここからM1は伝説を作ることになります。

2004〜2015年の間で、ロッシ選手が4回、ホルヘ・ロレンソ選手が3回、世界チャンピオンを獲得しました。ライダーのポテンシャルの高さもありましたが、M1の旋回性能の高さや、ヤマハの持つ長年のデータの蓄積と努力の結果で、7度の世界チャンピオン獲得という偉業を成し遂げたのです。

しかし、ロッシ選手の年齢からくる衰えや、ホンダの天才、マルク・マルケス選手の駆るRC-213Vの戦闘力の前に劣勢を強いられるようになりました。2013年シーズンから、年間チャンピオンを獲得したのは、2015年の一度だけでした。

2012年シーズンより、レギュレーションが変更され、1,000ccとなったMotoGPですが、初年度と2015年にヤマハはロレンソ選手がチャンピオンになったものの、その他の年は全てホンダ RC213Vとマルケス選手の前にタイトルを奪還していません。

また、ドゥカティのデスモセディチのパワーは、ヤマハのマシンが最高速で大きく差を付けられる結果となりました。旋回性能や、操縦性の高さを指向しているM1とはいえ、これほどの苦戦はかつてない事態といえます。

ウェイン・レイニーとヤマハ YZR-500

ヤマハが、これほどの劣勢に追い込まれた理由は、マルケス選手の台頭も原因の一つですが、それ以上に2016年シーズンからのマレリ製ECUの共通ソフトウェア採用も大きな要因となっています。

前回のV4編で解説した、マレリ製ECUは元々V4のドゥカティが採用していました。つまり、エンジンの形式が並列(直列)4気筒のヤマハのM1には相性問題があった可能性が高いです。

2ストローク時代からの栄光のヤマハの歴史上ないほど、苦戦したシーズンが2016〜2018年でした。しかし、2019年の後半戦からは、ファビオ・クワッタハッホ選手や、マーヴェリック・ビニャーレス選手を中心に、マルケス選手を脅かすような存在となってきました。2020年シーズンのヤマハ YZR-M1は大いに期待できます。

スズキ GSX-RR

出典 https://www1.suzuki.co.jp/ 2020年モデルのスズキ GSX-RR

スズキも2ストロークのロードレース世界選手権時代から参戦していたメーカーの一つです。1993年には、ケビン・シュワンツ選手のライディングでチャンピオンになり、強烈な印象を残したRGV-500Γの流れを汲むのが、スズキGSX-RRです。

スズキは、V4だった2011年までの4ストロークMotoGPマシン、GSV-Rで参戦していましたが、思うような結果が出ませんでした。数年のテストを経て2014年にMotoGPに復帰したマシンは、エンジン形式が大きく異なっていました。

今までのV4を捨て、市販マシンGSX-Rと同じ並列(直列)4気筒というエンジンレイアウトに変更したのです。GSX-Rのデータのフィードバックが容易なエンジンに変更したことで、バランスのいい車両を開発することができました。

スズキ GSV-R

スズキは、2015年シーズンより、本格的にMotoGPに復帰しました。2016年には、マーヴェリック・ビニャーレス選手の駆るGSX-RRがイギリスGPにて優勝するなど、徐々にポテンシャルを上げてきています。

特に昨年の2019年シーズンでは、アレックス・リンス選手により2勝しています。ヤマハ勢の好調と、GSX-RRの活躍は、並列(直列)4気筒勢の逆襲のプレリュードなのかもしれません。


2019年シーズンでの印象は、パワーも上がったものの、コーナリングとのバランスが秀逸で、バランスの良かった2017年までのRC213Vのような特性のマシンという印象を受けました。

もちろん、エンジン形式の違いで、コーナリングのアプローチは異なるのですが、ストレートでは、ドゥカティとホンダについていける程度、コーナリングでは同じ直4のヤマハと互角だったのです。ベストなバランスのマシンに仕上がってきています。

市販車のフィードバックがしやすい直4マシン

2018年式のYZR-M1

直列(並列)4気筒エンジンを採用しているヤマハとスズキは、ホンダ、ドゥカティ、KTM、アプリリアなどのメーカーがV4なのと対照的です。国内4メーカーのリッターSSは、全て直4であり、ヤマハ、スズキも例外ではありません。

マレリ製の共通ECUを使う現在のMotoGPでは、比較的データの多い(出場バイクの多い)V4勢の方が有利という声も聞きます。しかし、直4勢は市販車のフィードバックが容易な点もあり、複雑な構造のV4に対して、シンプルな構造が直4の強みです。

デメリットは、2次振動が強くなることと、構造的にエンジンのサイズが大きくなることです。低回転域での安定的なトルクのため、YZR-M1と市販車のYZF-R1は、クロスプレーン・クランクシャフトを採用しています。

つまりヤマハとスズキは、市販車に技術をフィードバックしやすいエンジン形式を採用していることになります。ドゥカティのようにパニガーレV4といった市販車のV4マシンを製造しているメーカーもあるので一概には言えませんが、レースの技術をすぐにでも転用できるというのは、最大のメリットでもあります。

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