DTMでハードロック曲のミキシング!

DTMでアルバム制作、第5回はハードロックのミキシングについてです。深く歪んだギターのトーンは、左右に振り分けていても、他の楽器とのバランス取りが重要です。ギターのリフは、かなり重要な要素なのですが、ドラムやベース、ボーカルがしっかり聴こえないといけません。

佳境に入った録音作業

メインのギターアンプ VOX AC15C1

2月下旬から作業開始した6枚目のアルバムも、ついに6曲目のミキシングが完了しました。後1曲録る予定で、今のところ次のアルバムは7曲ということになりそうです。“Willy Nilly”は、混乱した世相を皮肉った英詞のハードロック曲です。タイトルの意味はしっちゃかめっちゃかです。

この曲は、完全にギターのリフから生まれた曲です。ビートルズの名曲、“Get Back”っぽいリフ弾いてたらフレーズが自然に出てきました。初めからこの曲は、シンプルにドラム、ベース、ギター、ボーカルのみで録るつもりでした。

ギターの録音には、左チャンネルにヘリテイジ(レスポールタイプのメインギター)と歪ませたバッキングトーンを、右にギブソン レスポールJr.のバッキングとリードを入れました。アンプはVOX AC15C1で、マイクはSM57を使いました。

トラックダウンとは?

Cubaseの場合、最終的に出力側のチャンネルにトータルエフェクトをかけるだけで完成してしまう

以前は、マスター音源を作る際には、多数のトラックを2トラックにまとめる、トラックダウンが重要でした。MTR時代は、テープにしてもハードディスクにしても、トラックダウンを必ず行っていました。

DAWの場合ミキシングをした後に、ミキサーのステレオ出力トラックにトータルエフェクトかけるだけで作業が終了するのです。

つまり、以前はトラックをステレオの2チャンネルにまとめて、コンプなどのトータルエフェクトをかけていたのですが、DTMの場合、出力チャンネルにエフェクトをかけて、書き出しするだけで良くなったのです。DAWソフトは、デジタルデータのwavファイルに最終的にまとめるので、マスターの概念が変わったためです。

以前はテープやDATなどに保存されていたマスターが、データ化されたので作業の工程自体が変化しました。トラックダウンのことを明確に意識しているのは、MTRを扱っていた世代までということになるのかもしれません。

それでも、5.1チャンネルサラウンドシステム対応の音源でもない限り、2トラック(ステレオ)で左右と奥行きによるバランスをとる必要はあります。最終的に出力されるチャンネルは、2つなので言ってみればトラックダウンを意識したミキシングは今でも行っていることになります。

ミキシングとは、フェーダーやエフェクト、定位などを設定して、トラックダウンのために各トラックを調整することです。ドラムはステレオなので2チャンネルで、ベース、ギターの左右、ボーカル合わせて6チャンネルのトラックを今回はミキシングしていきます。

作業の手順について

よく言われるのが、頭の中に明確なイメージを作ることです。左右だけでなく、音や空間系エフェクトによる奥行きのバランスなども考えます。一番目立つのは、ボーカルやらリードギターなのですが、ロックの場合、ベースやドラムもバランスよく聴こえなくてはなりません。

EZ Drummerの場合、ミキサーが個別にあり、ステレオで出力されているので、バランスを取る必要があります。ハイハットやライドの定位は特に、バッキングとのバランスを考慮する必要があります。

しかし、あまり極端に定位をとると、バッキングをステレオで配置する場合は、バランスが悪くなるので、ハイハットを少し中央に近い左の31にしました。対照的にタムは、動かした方が迫力があるので、そのまま左右に振り分けています。

バスドラとスネアは、中央に固定するのが一番安定します。ビートルズのアルバムで、左にドラムというのがあったりしましたが、これはステレオ黎明期の混乱の中で生まれたものです(汗)。バスドラとスネアを中央で安定させると、曲の土台をしっかりと支えてくれます。

ベースの場合も同様で、センター固定です。リバーブなどは、最小限にしています。というのも、全体に馴染ませるくらいにしないとベースの場合、音がぼやけるからです。

ここまでで、重要な土台の部分であるドラムとベースのバランスを取りました。ここからはギターやボーカルといった、トラックの作業を行います。

ギターを2トラックにした理由

右側のギターのイコライジングは少し低域を持ち上げている

今回、2トラックでギターを左右に振り分けたのは、理由があります。3トラックでリードだけのトラックにした方がリードの定位を中央に出来るので、色々と編集はやりやすいのですが、この曲はシンプルに2本のギターで録った方がすっきりすると思ったからです。

このように、録音の段階からミキシングをイメージして録ると後の作業が楽になります。というのも、明確なコンセプトがないのに、ごちゃごちゃトラックだけ増やすと、後でミキシングをするときに混乱するからです。

イメージとしては、中央のバスドラ、スネア、ベースに対して、ギターは左右に60くらいのところで定位を取ります。リバーブを2本それぞれにかけて、ヘリテイジはリアピックアップを使った、少しジャリジャリしたトーンに、レスポール・ジュニアは、トーンを少し絞った中域の強いトーンにしました。

リードの後半だけ深めのディレイにしてためを作る

少し凝ったところは、2回目のリードにおける、リバーブからディレイの入れ替わりです。2回目に弾いたリードの残り8小節は、チョーキングを伸ばしたタメの部分です。ここに短めで浅いリバーブから、深めのディレイにすることで、ブルーズっぽいタメ重視のノートが印象付けられます。

Cubaseには、インサーションと、センドリターン、2つのエフェクトのかけ方があります。インサーションエフェクトは、定位などを個別に設定できない、言ってみればかけ録りのエフェクトのことです。

それに対して、センドリターンとは、各チャンネルに後からかけるエフェクトであり、定位や、エフェクトの強弱などを個別に設定できるエフェクトのことです。つまり独立したサブトラックを使って、個別にかけるエフェクトだと思ってください。

ギタリストに簡単に説明すると、センド・リターン端子に差し込むエフェクターのことです。Cubaseの場合は、FXチャンネルとして、新しくチャンネルを作った後に、各トラックのセンド・リターンエフェクトの項目に追加していく必要があります。


そして、右側のギターには、浅めのリバーブをかけていたのですが、8小節だけディレイに入れ替えます。定位は両方とも61でオートメーションでフェーダーを上げ下げする機能を使います。

この場合、各FXチャンネルにあるRボタンをクリックして、ボリュームにします。任意の小節で、リバーブを一番下に、ディレイを適正なボリュームに設定します。これで作業は完了です。書き込みは、各トラックの左端にあるボタンをクリックして、棒グラフのような線に鉛筆とか矢印ボタンをクリックしてから書き込むだけです。

DAWの場合は、このようにオートメーションに各トラックの設定を変更できる機能があるのです。この技は、ボリュームだけでなく定位の変化にも使えられたりするので、覚えておくと格段に作業が進むようになります。

ボーカルについて

ボーカルのディレイのセッティング例

ボーカルに関しては、センターに配置することがポピュラーです。リード楽器も同じように真ん中が望ましいのですが、それは一番目立つところに一番聴いて欲しい楽器を定位するからです。

エフェクトは、今回も空間系を使います。リバーブよりも深めにかけたかったので、ディレイを使います。ロングディレイは、テンポによって計算が必要なのですが、Cubaseのモノディレイの場合は、1/8で合わせれば問題なく使えます。

ただ、あまりかけすぎても、いかにもディレイかけましたという感じになるので、レベルを少し下げておきます。

男性ボーカルの場合は、イコライジングを工夫すると、他の楽器との棲み分けができます。筆者(tkd69)は、典型的なバリトンですので、中域を少し持ち上げるようにしています。

仕上げ~トータルエフェクトについて

今回使用したレスポールJr.

後は余分なところをカットしていきます。録音してノイズになりそうな、楽器の音が出るまえのポップノイズの部分だとか、ボーカルの無音部分など、オートメーション機能で、その部分のフェーダーを下げておきます。

曲のエンディングの、フェーダー操作などもオートメーションで書き込んでしまうのがいいです。ここまでやって問題がなかったら、最後にミキサーを開いて、トータルエフェクトを、マスタートラックにかけます。

このトラックは、ミキサーを開いて右端にあります。ステレオになっているので、eマークをクリックし、インサーションにコンプなどをかけます。リミッターは、余分な音をカットするためにかけるもので、コンプレッサーは、レンジを圧縮して音を整える効果のあるエフェクトです。

昔は、よくリミッターやコンプなどで馴染ませていましたが、今ではマキシマイザーという便利なエフェクターがあるので、それを使います。

マキシマイザーとは、音圧を上げる効果のあるエフェクターです。コンプレッサーの一種ともいえるのですが、音量自体を変化させずに音圧のみを増加させるのが、マキシマイザーです。

ただ、あまりかけすぎると歪むので、その場合はもう一度ミキシングから見直して、コンプやリミッターをかけます。全ての曲が揃っていない段階では、他の曲とのバランスがある程度とれていればオッケーなので次の曲の録音作業に移行します。

※2019年6月追記

今回紹介した”Willy Nilly“は、tkd69のアルバムSIXの2曲目です。NumberOneMusicサイトで無料で聴ける他、Amazon、Apple、Spotifyなどの各ストリーミングサイト、ダウンロードサイトでも販売中です。

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