アンプシリーズ3回目は、ブリティッシュアンプことイギリス製アンプについて紹介します。メジャーな存在は、マーシャルとVOXです。マーシャルとヴォックスは、特性がまったく異なるアンプです。
イギリス製アンプの特徴について
出典 https://www.voxamps.com/ VOX AC30 S1
ロック機材、特にアンプに関してはイギリスはアメリカと同等の存在感を持っている国です。1960年代のブリティッシュ・インヴェイジョン期のバンドに愛用されたMarshallやVOXといった優れたメーカーが、ロックの定番ともいえるアンプを開発していきました。
マーシャル、ヴォックスを使うギタリストにより、現在のアンプのような多機能なアンプが次々と生み出されていきました。アメリカとの違いは、使っている真空管の違いと電圧です。
筆者が投稿したこの記事の動画バージョンです。
マーシャルで使われているプリ管はECC83で、これは12AX7と互換性のあるものです。対照的なのは、マーシャルのパワー管にはEL34管が使われていることです。6L6管中心のアメリカ製アンプと異なるポイントです。
イギリスでは、200Vが標準的な電圧であるのに対して、アメリカは120V、日本は100Vです。これだけ電圧が違うと出力するトーンも変わってくるのです。
マーシャル・JCMシリーズについて
出典 http://www.marshallamps.jp/ マーシャル JCM800のヘッド
Marshallは、スタックアンプを開発し、今でもロックの代名詞のようなアンプメーカーです。マーシャルといえば、スタジオに常設されているJCMシリーズで、僕もお世話になっています。
僕がバンドを始めたときには、2チャンネルのJCM900が主流でした。とあるスタジオで、1チャンネルのJCM800を弾いたとき、そのトーンの素晴らしさに驚いたものです。
JCM900は、前期と後期で真空管の種類が変わっていたり、へたっていたことが多いのですが、そのJCM800はコンディションが良かったのだと思います。EL34管は、粘っこくてバリバリします。後期のJCM900に使われていた5880管は、どちらかというと6L6に近い管ですのでマーシャルだとEL34管の方がイメージ的に合っています(汗)。
JCM800とJCM900前期型は、バンドを始めたときに使うことが多いスタジオのアンプでした。当時は、ローランドのジャズコーラスの良さが解っていなかったので、ストラトやらレスポールをJCMのスタックにプラグインしていました。
JCM800の歪みの特徴は、激歪みというよりもバリバリとしたオーバードライブという感じです。JCM900は、後期型からガッツのあるトーンになり、前期型にあった音抜けの良さがスポイルされてしまった印象があります。
荒めのオーバードライブサウンドこそが、マーシャルの真骨頂であり、粒が細かくなってしまった今のJCMシリーズは好きになれないのです(思い出補正もあります)。
今では、後継モデルのJCM2000を置いているスタジオが多いのですが、JCM2000もセッティングしだいでは、そこそこいいトーンは出せます。ただ、マーシャルは昔から個体差が大きいので、最近ではもっぱら安定性のあるジャズコにエフェクターかまして使うことが多いです。
VOXといえばAC30!
出典 https://www.voxamps.com/ VOX AC30 HW60
もう一つのブリティッシュアンプの雄といえば、VOXです!独特のデザインのVOXロゴを見るだけで、ロックという感じがしてしまいます(笑)。ジョン・レノンやジョージ・ハリスンやブライアン・メイといったロックのレジェンドが使用していたのが、AC30です。
AC30は、30WのクラスA動作の12インチスピーカー2発のコンボアンプです。クラスA動作というのは、入力される信号に対して、真空管をフル稼働しています。音の立ち上がりが早い変わりに歪みにくい構造となっていて、真空管の寿命が短いとされています。
ビートルズ初期のギタートーンのようにクリーンに定評があったAC30ですが、ブライアン・メイのようにジョン・ディーコンの製作したブースターを繋げてフルアップしたAC30の歪みを好むギタリストもいます。
パワー管に小型アンプに使われることの多いEL84管4本を使用していて、中域にクセのある印象があります。スタジオで置いてある場合もありますが、ぶっちゃけ接する機会が少なくて僕には使いにくいアンプです。
出典 https://www.voxamps.com/ AC30のパネル部インプットが6つ(汗)
AC30を使いこなすならば、実際に所有して徹底的にクセを知り尽くす必要があると思います。というのもこのアンプ、インプットが6つもあります(大汗)。パッシブタイプのPUならハイ、アクティブタイプのPUならロー接続でいいと思うのですが、左からビブラート、ノーマル、ブリリアントです。
ビブラートは、トレモロユニットの使用を可能にするインプットで、ノーマルはそのまま普通ということです。ブリリアントチャンネルはトップブーストする回路を通るチャンネルのことです。
ぶっちゃけ、どこにプラグインするのが正解なのかよく解らないアンプです。ハイ側のブリリアントチャンネルに差すのが正解だと思います。チャンネルリンク技も含めると、とっつきにくいアンプというのが、僕のAC30に対する印象でした。
それでも、このアンプを使いこなして数々の名演をしてきたギタリストが多いのも事実です。お金に余裕があれば、1台買ってじっくり研究したいアンプの1つです。
※2018年12月追記
最近、VOX AC15C1を自宅練習とレコーディング用に購入しました。AC30にもCことカスタムシリーズがあり、現代的な2もしくは1インプットとなっています。しかも、トップブーストチャンネルの場合、かなり歪むし使いやすいです(AC15C1での場合)。
モダンな味付けのAC30Cシリーズなら、アンプをちょっと使ったことのある人なら簡単にセッティングできると思います。
ハイワットとレイニー
出典 https://www.digimart.net/ ハイワット DR103
HIWATTは、1960年代にザ・フーのギタリスト、ピート・タウンゼントとベーシストのジョン・エントウィッスルのアンプを手がけたことから始まったブランドです。ピート・タウンゼントの要求によって作られたハイワット DR103は名器として有名です。
DR103は、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアも使用したアンプですが、実物を弾いたことはありません(大汗)。というのもハイワットは、なかなか日本のスタジオやライブハウスに置いていないのです。
パワー管がEL34管ということなので、ブリティッシュアンプの特徴はあると思いますが、マーシャルとは個性が違うような気がします。単体ではあまり歪まないというか、クリーンが綺麗に出るというか、そんなイメージです。
出典 https://www.soundhouse.co.jp/ レイニー VC30-212
もう1つ気になっているのが、Laneyです。こちらもブリテッシュアンプなのですが、クラスA動作のVC30というアンプが安くて良さそうなのです。ECC83をプリ管に、EL84管をパワー管に使用しています。
クリーンからクランチまで、しっかりとしたフルチューブアンプでありながら、格安で買えるという点で魅力的なアンプです。
ブリティッシュ・アンプの魅力とは?
出典 https://www.digimart.net/ マーシャル JCM900 ヘッド
ブリティッシュアンプの魅力とは、一言でいうとアメリカ製とは一味違うぜ!ということにつきます。そもそもフェンダー・ベースマンを参考にしたマーシャルも、イギリスで入手しやすい真空管や、パーツを使ったためにフェンダーとは異質な個性を持つようになったのです。
ヴォックスは、クラスA動作のアンプAC30を主力にして、シェアを拡大し、マーシャルと肩を並べる形でイギリスの音楽シーンを支え続けました。アメリカで生まれたロックや、エレキギターですが、イギリスのロックやアンプが果たしてきた役割の大きさにより、多様性を確保するようになったのです。
ロックにおけるブリティッシュアンプの功績は、かなり大きく、特にスタック3段積みは、ピート・タウンゼントとマーシャルのコラボレーションがなければ出来ていません。
僕にとっては、スタジオに置かれていたJCMシリーズでアンプの音作りの基礎が学べたことは大きかったです。その後、アンペグを経てメサ・ブギーを購入してアメリカ製アンプの魅力にはまりました。マーシャル JCM800~900で覚えたことが、そのまま自分のアンプにも活用することができました。
次回は、いよいよ日本製アンプの解説をします。ロック史において、日本製アンプとエフェクターの果たした役割は大きく、ソリッドステートアンプをポピュラーにしたのは国産のギターアンプなのです。
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