佳作は多いが覇権アニメはなかった2018春アニメその2

前回に引き続き2018年の春アニメランキングを5位~10位まで発表します。2018年の冬アニメで2クールの作品も含めた個人的なアニメのランキングです。

第6位 グランクレスト戦記

出典 https://grancrest-anime.jp/

ロードス島戦記』といえば、1980年代のTRPG(テーブルトークRPG)から派生した水野良のファンタジー小説です。ロードス島戦記は、その後1990年にOVA(オリジナルビデオアニメーション)として、アニメ化されました。

グランクレスト戦記』は、ロードス島戦記の作家水野良の同名小説を基にした、ファンタジーアニメです。制作はA-1 Picturesで、監督は畠山守です。シリーズ構成を水野良と矢野俊策が務めました。

ロードス島戦記は、原作も既読でOVAも視聴していました。グランクレスト戦記は、原作未読なので、アニメが作品に触れた最初の機会となっています。王道のファンタジー戦記ものとして、よく出来ている話でした。

各陣営のパワーバランスや、主人公テオの立ち位置などの設定がよく出来ていました。ヒロインを戦略担当の魔法師のシルーカとした点も良かったと思います。個人的には、ロードス島戦記のディードリットも好きなキャラクターだったので、水野原作のヒロインは、魅力的なキャラが多いです。

2クール24話で、きちんと話を終わらせています。話のスケールの大きさから、4クールでやればもう少し丁寧な描写が出来たのではないでしょうか?肝心の戦争シーンが、ほとんど数分で決着がついてしまうケースが多かったです。

あっさり風味というかスルーされているというか、大軍(数個師団規模)の戦闘なのにカタルシスを感じられなかったです。対照的に活劇要素の強いボス戦には、力が入っており、作画の質も高かったと思います。

きっちり話しもまとまっていて、最後はハッピーエンドで終わるのですが、少し物足りない感じがしました。アニメとしてのトータルの出来は、そこそこ良かったのですが、色々と惜しい作品だったと思います。

第7位 ヒナまつり

出典 http://hina-matsuri.net/

ヒナまつり』は、大武政夫の漫画を原作にしたアニメです。大武政夫は『高校鉄拳伝タフ』の猿渡哲也のアシスタントでした。基本的にギャグマンガですが、主人公のヒナやアンズは、超能力の使える未来人です。

インテリヤクザの新田が、突如現われたヒナを引き取って起こるトラブルや日常生活を描いたドタバタコメディですが、なかなかシュールで面白い作品でした。一番凄いキャラクターは、ヒナの通う中学の友人の三嶋瞳で、なぜか凄腕バーテンダーとして巨大な人脈を築いていきます(笑)。

1クール12話で、切りのいいところで終わっています。最終話では、本編の終了後、第3の超能力少女マオの話で締めくくられています。これは、第1話の冒頭部分と、最終話の後半部分を変則的に繋げるという、スタッフの遊び心からの編成でしょう。

原作は14巻まで出版されていて、ハルタにて連載中です。監督は及川啓で、アニメスタジオfeel.が制作しています。作画も安定していて、話のテンポも良く、面白いコメディ作品だったと思います。

第8位 ひそねとまそたん

出典 http://hisomaso.com/

『ひそねとまそたん』は、監督を『シン・ゴジラ』、『ガメラ 大怪獣空中決戦』などで知られる実写畑の樋口真嗣が、脚本を『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の岡田麻里が、それぞれ担当しています。

この強力なメンバーと、『交響詩篇エウレカセブン』で知られるアニメスタジオBONESが組んでアニメを制作するというのですから、期待度は高かったです。

変態飛翔生体 (OTF)と呼ばれる、ドラゴンを擬装するために、航空自衛隊の既存の機体の外装を装備させるというのは、斬新なアイデアだったと思います。主役OTF「まそたん」にはF-15Jイーグル、「ノーマ」にはF-2A バイパーゼロ、「フトモモ」にはC-1、「あけみ」にはE-2Cといったように4機のOTFそれぞれ外装が異なります。


樋口監督によるとF-35A ライトニングⅡは、現在のところ配備している機数が少なく擬装に適していないので、まそたんはF-15にしたそうです。この作品の惜しいところは、OTFの機動性(VTOLEなど)で、災害救助などで活躍させなかったことです。

同じ航空自衛隊の活躍を描いた新谷かおるの漫画、『ファントム無頼』のように活動させることも出来たのではないでしょうか?最終回の、ミタツと呼ばれる巨大OTFに対しての各OTFの活躍はありましたが、設定を生かしきれていないように感じました。

第9位 バジリスク~桜花忍法帖~


バジリスク~桜花忍法帖~』は、山田正紀の小説『桜花忍法帖 バジリスク新章』を原作にしたテレビアニメです。山田正紀といえば、『機神兵団』もアニメ化されており、こちらは架空戦記ものとロボットものを足して2で割った作品ですので、オススメです。

この話の前日譚として、せがわまさき山田風太郎忍法帖シリーズを基にした漫画『バジリスク~甲賀忍法帖~』がヒットして、テレビアニメが2005年に放送されています。山田風太郎の『甲賀忍法帖』は、忍法帖シリーズの第1作で、1958年に刊行された超人的な忍者によるチーム戦を描いた作品です。

エログロを所々に用いながら想像力を駆使して、超人的な忍者同士の戦いを描いた忍法帖シリーズはベストセラーとなりました。筆者は80~90年代に刊行された天野喜孝のイラストのイメージが残っています。

今回は、伊賀と甲賀は手を結んでおり、成尋衆と呼ばれる超人集団と対決します。17話から23話までの死闘では、忍びの仲間は次々に倒れ、成尋衆も一人一人倒されていきます。凄惨でシビアな描写は、最近のぬるいアニメにはないものでした。

ここまで丁寧に描かれていただけに、最終話が納得できませんでした。なぜか平行世界に飛ばされた甲賀八郎と伊賀響が、倒したはずの成尋衆が生きている世界で再戦し、あっさりと全員倒してしまうのです。

あの死闘はなんだったのかと疑問に思います。甲賀や伊賀のそれぞれの忍者の散り際での感動を返して欲しいです。最終話手前までは佳作だっただけに残念なこととなってしまいました。

制作はセブン・アークス・ピクチャーズで、監督は『プロゴルファー猿』、『手天童子』の西村純二です。

第10位 覇穹 封神演義

出典 http://www.tvhoushin-engi.com/

覇穹 封神演義』は、藤崎竜の漫画『封神演義』を再アニメ化した作品です。中国の奇書『封神演義』を原作にしていますが、藤崎漫画版では、超古代文明説を取り入れることでかなりぶっ飛んだ内容となっています。

元々、ジャンプコミックスで23巻もある作品を2クール23話で再現するのは無理がありました。話が飛び飛びで時系列がよく解らないことが多く、原作の大幅な部分をカットしているので、正直言って中途半端な出来でした。

特に最終回は、原作未読の視聴者には、意味の解らない内容となっており、プロの脚本家が書いたとは思えないほど酷い出来でした。制作はC-Station、監督は相澤伽月、シリーズ構成は高橋ナツコです。

なかなか出ない覇権アニメ

出典 https://www.marv.jp/special/tokyoghoul/

2018年春アニメは、毎週視聴しているアニメが15本と多く、チェックするのが大変でした。意外と銀英伝や、バジリスクや、グランクレスト戦記など小説原作の作品も多かったです。

オリジナルでは、期待していたダーリン・イン・ザ・フランキスがあまりいい出来ではなかったのが残念です。対照的に多田くんは恋をしないなどの佳作もありましたが。

バジリスクや封神演義のように最終回で、大幅に作品の評価を下げてしまうケースが目立ちました。”BEATLESS“は、水島監督の体調不良が原因で、完結編を9月頃にやるようですので、それまでのレビューは控えました。

なかなか、覇権アニメが出てこないという印象の春アニメでした。佳作は多いけど、傑作が出てこないという印象でしょうか?夏アニメにも期待していますが、1日2本以上アニメを見るのは大変なので、次のクールから作品数を減らして視聴していくつもりです。

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