2017年シーズンの2輪最高峰レース、MotoGPもすべての日程を終えました。印象的だったのは、前半強かったヤマハが、後半に入って調子が出なかったこと、ドゥカティのアンドレア・ドヴィツィオーゾの6勝です。
■2017MotoGPで印象的だった出来事
去年のチャンピオン、ホンダのマルク・マルケスは苦戦していました。最終戦のスペインのバレンシアGPまでタイトルが決まらなかったのも、ドヴィツィオーゾが今年は強かったからに他なりません。
今シーズンは、前年同様、ミシュランタイヤの1メイクレースです。2015年までブリヂストンだった頃と違って、コースによって有利不利が目立ったシーズンでした。
レース毎に、ホンダが上位を占めたり、ヤマハだったりする光景が何回も見られました。1~3位まで同じメーカーのバイクが2台入るといった極端なレースが多かったです。
一概にタイヤの影響だけということはありません。2016年からECU(エンジン・コントロール・ユニット)の共通化がありました。ECUの共通化は、マシンの開発コストを抑えられたり、メーカーによって極端な差が出なくなるというメリットがあります。
昨シーズンのホンダRC213Vのストレートスピードが、ドゥカティ デスモセディチに比べて遅かったのは、こうした共通ECUの弊害によるものでした。
昔からハンドリング性能の高いヤマハは、テクニカルコースで強く、ストレートで勝るホンダは、ハイスピードコースで有利ということはありましたが、ここまではっきりと差が出たのは、今年が始めてではないでしょうか?
MotoGPをプロモートしているドルナも、この問題についてはなんらかの対応策を考えているでしょうが、コース毎にこれだけ差が出るとレースがつまらなくなってしまいます。
■エキサイティングな後半戦!
オーストリアGP 中央は優勝したドヴィツィオーゾ 左は2位のマルケス 右は3位のダニ・ペドロサ
今シーズンで、ベストなレースといえば、第11戦のオーストリアGPと、第15戦の日本GPではないでしょうか?最終ラップまで、ランキング1位と2位の選手が、トップ争いをするというエキサイティングな内容で、最終コーナーで決着が付いたからです。
特にこの2戦は、何度も抜きつ抜かれつという火花が飛び散るほどのドッグファイトが見られました。どちらもドヴィツィオーゾがマルケスに勝ってます。
MotoGPが世界で最もエキサイティングなモータースポーツの一つであるのは、ドッグファイトがあるからです。最後まで勝負がわからないレースほど、面白いものはありません。
今シーズンのマルケスは、タイヤやセッティングで悩んでいたとはいえ、強かったです。ドヴィツィオーゾが、これだけ肉薄しなかったらつまらないシーズンになっていたでしょう。
ドヴィツィオーゾがいいライダーなのは、ホンダ時代からわかっていたことです。しかし、当時はダニ・ペドロサに次ぐ存在で、後から加入したケーシー・ストーナーに押される形で、ヤマハに移籍したのです。
個人的にホンダのファンですが、このときは悲しかったです。というのも3台体制のまま続けていればドヴィも移籍せずにレプソル・ホンダに残れたのですから。
2013年からドゥカティに移籍し、デスモセディチの戦闘力を高めていきましたが、年間ランキングも最高が5位と、ホンダ時代にランキング3位となった成績には及んでいませんでした。
ところが、今年はマルケスに並ぶシーズン6勝をあげ、ランキングも2位と素晴らしい成績でシーズンを終えました。31歳にして、なにかつかんだのかもしれません。来シーズンは、ドゥカティのエースとして活躍するでしょう。
■ヤマハの不振の原因は?
バレティーノ・ロッシとYZR-M1
シーズン前半は、マーヴェリック・ビニャーレスや最高峰クラス6度のチャンピオン、生きる伝説バレティーノ・ロッシの活躍により、ヤマハが強かったです。サマーブレイク明けの後半戦に入ってから調子を落とし、チャンピオン争いから後退していきました。
ヤマハは、マシン開発に関して後半で致命的な失敗があったのではないでしょうか?ドルナの規定で、トップチームはエンジンの開発がシーズン中にできないようになっています。また、使えるエンジンの数も制限されているので、モディファイは車体関係中心になります。
今シーズンは、ミシュランタイヤの影響?で、コースによって差がつきやすい状況でした。もともとコーナーの旋回性が高く、コントロールしやすいと定評のあるYZR-M1だけに、ストレートスピードで他社に劣る分、なんらかのアドバンテージをつけたかったのでしょう。
どんなコースでも対応できる仕様に改良しようとした結果、どこのサーキットでも走らないマシンになってしまったのかもしれません。
■スズキとKTMの戦闘力の向上
スズキ GSX-RR
今のところ、ホンダ、ドゥカティ、ヤマハの3強ですが、スズキとKTMのマシンの戦闘力が上がってきています。スズキは、今シーズンの後半戦でシングルフィニッシュが増え最終戦バレンシアでは、アレックス・リンスが4位、アンドレア・イアンノーネが6位という結果を出しました。
日本GPでもイアンノーネ4位、リンスが5位という結果ですので、後半戦のGSX-RRの進化は誰の目にも明らかです。
一方、KTMのRC16は、オーストラリアGPでポル・エスパルガロが9位、ブラッドリー・スミスが10位とコンスタントにトップ10付近に入ることが増えてきています。
コンストラクター部門でもスズキが4位でKTMが5位となっており、着実に戦闘力を上げてきているといえます。KTMやアプリリアは、上位4メーカーと違ってエンジンの基数や、テストの回数に制限が少ないので、来シーズンの活躍に期待したいところです。
■チャンピオン マルケスと来シーズンへの期待
共通ECUや、使用可能なエンジンの制限などでマシンの差がなくなりつつある中、重要なのはライダーの能力です。そういう意味で最高峰クラスで4度目のチャンピオンを獲得したホンダのマルク・マルケスの才能は抜き出ていると思います。
今シーズンのRC213Vの出来は悪くはなかったものの、ストレートではドゥカティより遅かったです。マルケス以外のライダーではレプソル・ホンダのペドロサが年間4位、LCRホンダのカル・クラッチローが年間9位とふるわず、ホンダが強いというより、マルケスが取ったタイトルのように思えます。
マルケスの強みは、身体能力の高さです。最終戦では、100%位転倒する可能性のある状態から、無理やり立て直して3位に入っています。また、ウェット宣言されたレースでのマシンへの飛び移りの早さも群を抜いていますし、圧倒的な能力があるライダーです。
今シーズンは、ドヴィツィオーゾ選手と並んで優勝6回で298ポイントを獲得しました。ポールポジションは、5シーズンで合計45回とマイケル・ドゥーハン、ロッシに続く3位にランキングされています。
マルケスの要求に答え続けたホンダのチーム力は高いです。しかし、それ以上にマルケス自身のパフォーマンスが目立ったシーズンだったのではないでしょうか?
来シーズンは、ホンダのサテライトチームであるLCRからMotoGPクラスに中上貴晶選手が参戦しますし(青山博一以来4年ぶり)、スズキのマシンにも期待できます。
F1と違って日本メーカーが上位で活躍しているMotoGP、日本でももっと盛り上がって欲しいです!
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