選挙公約に明記されていない水道法改正

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国会で奇妙なことが起こっています。水道の民営化を目指した水道法改正案が、7月5日の衆議院で通過し、参議院に送られることとなりました。そこで疑問に思ったのが、2017年の自民党の衆院選の選挙公約水道民営化が織り込まれていたかということです。

水道民営化とは?

現在のところ、日本の水道は各自治体の水道局によって運営されています。しかし、小渕内閣のときの1999年のPFI(Private Finance Initiative)法が成立されました。国の運営している設備に対して、民間事業者が運営を行えるようにするという法律です。

2011年の管内閣時にはこのPFI法が改正され、活用対象が社会インフラにも拡大されました。この改正により、国や自治体が施設の所有権を持ち続けたまま、その運営権を民間事業者に経営を委託する「コンセッション方式」が導入されました。

このコンセッション方式により、現在は民間事業者に水道事業を委託している自治体もあります。愛媛県の松山市は、フランスのヴェオリア社に水道事業を委託しています。

今回の水道法改正案は、運営権を民間に売却することが盛り込まれています。これは、更に踏み込んで民営化を推進する動きです。今までは、経営を民間に委託するだけだったものが、運営権を売却することによって、民間事業者が完全に運営の手綱を握ることになります。


今までは国が施設の権利を保有し、運営権も保有している公有運営という形だったものが、公設民営という国が施設の権利を保有して、民間に運営権を完全に委託するという形になるということです。

公有運営の場合は運営権が自治体に残っているわけですから、委託された民間事業者は特殊会社という形態で事業に関わっていました。今回の法改正によって、運営権を完全に民間事業者が手中にするということです。完全な民営化とは、設備までも民間事業者が保有することですから、今回は公設民営というのが正しいです。

衆院選の選挙公約には書かれていない民営化

2013年に麻生太郎副総理が、ワシントンにあるCSIS(米戦略国際問題研究所)を訪れたとき、こういったそうです。「日本の国営もしくは市営・町営水道は、すべて民営化します」と。

また、パソナ会長である竹中平蔵氏も同様の発言をしており、この段階で水道民営化は決まっていたことなのです。しかし、奇妙なのは昨年(2017年)の自民党の衆院選挙の選挙公約には、水道事業の民営化が一文字も書かれていないことです。

自民党の選挙公約を一通り読んでみたら、33ページの国土強靭化という項目にひっそりと、上下水道のインフラについて書いてありました。

ライフラインである水道の老朽化対策や地域の医療機関等の耐震化等の強靭化を進めます。【中略】
上下水道の老朽化対策や耐震化等のライフラインの防災対策、ゲリラ豪雨に備えた・・・【以下略】

このような重要な政策を、選挙公約にしていないという点で首を傾げます。ワールドカップと、地下鉄サリン事件の犯人の処刑のニュースに隠れるように、こっそりと衆院を通過させるという手法にはあきれます。

更に問題なのが、主要メディアのほとんどが、水道民営化に対して報道をきちんとしていない点です。本来ならこれらの記事は、新聞やテレビが扱うことでしょう。安倍政権になってからというもの、国内メディアはことごとく政権に対して批判する能力を失っているように思えます。

日本の治水事業のこれから

日本は、世界でも類をみないほどの上質な水道水を飲める国です。ヨーロッパでは、水道水は飲めないほど濁っており、飲み水としてミネラルウォーターを購入することが当たり前となっています。

日本の治水事業は、確かに市町村の自治体単位での運営が基本で、全国で1400弱の事業体があるなど、効率のいい運営ではありません。しかし、これまで公共事業として行い、各自治体に寄り添う形で継続してきたものを、設備の老朽化を理由に民営化していいものでしょうか?

日本水道協会によると、漏水などのトラブルは年間で2万2,000件発生しているようです。厚生労働省によると、14年度末時点で40年(耐用年数)を超えた水道管は12.1%(約8万km)です。

しかし、2014年度中に交換されたのは約5,000kmにとどまり、このペースだと30年後には50%を超える見込みだということです。民営化よりも重要なのは、これらの老朽化した水道管を公共事業により、徐々に入れ替えていくことではないでしょうか?

余計なことに予算を使いきる現在の体質を改革して、インフラなどの必要なところに予算を回すという当たり前のことが出来ていないのが、現在の日本なのです。このまま腐りきった自民党の政権下で、適切に運用されるとはとても思えません。

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