サンライズのロボットものの元祖?:無敵超人ザンボット3

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アニマックスで深夜に再放送していた『無敵超人ザンボット3』を全話視聴しました。日本サンライズの記念すべき第1作で、ガンダムやイデオンの監督の富野喜幸(由悠季)の作品です。

目次 この記事の内容

  • ザンボット3はサンライズの第1作!
  • 当時のアニメでは出来なかったこと
  •  金田伊功の作画とシビアな展開
  • 衝撃的な最終回と大山のぶ代のアドリブ!

 

ザンボット3はサンライズの第1作!

出典 http://zambot3.net/ 画像はすべて公式ページより 主役メカ ザンボット3

日本サンライズ(現サンライズ)といえば、『機動戦士ガンダム』や、『装甲騎兵ボトムズ』、『コードギアス 反逆のルルーシュ』といったリアルロボットものの名作の多いアニメスタジオです。

『無敵超人ザンボット3』が放送されたのは、1977年10月から1978年3月にわたる2クール23話で放送されました。後番組の『無敵鋼人ダイターン3』を経て『機動戦士ガンダム』が制作されました。2017年は、放送40周年でデジタルリマスターもされています。

筆者が投稿したこの記事の動画です。

筆者は、日本サンライズのリアルロボット全盛期の大ファンで、ザンボット3やダイターン3は子供向けのちゃちなアニメとしか思っていませんでした。1995年のゲーム『第4次スーパーロボット大戦』で登場し、ロボット大図鑑での過酷なストーリーを読んで見てみたいと思うようになっていたのです。

アニマックスの2018年5月7日からの深夜放送で、ようやくザンボット3を視聴したというわけです。総監督に富野喜幸、キャラクターデザインに安彦良和、一部メカデザインに大河原邦男という制作陣は、後の『機動戦士ガンダム』と共通しています。

当時のアニメでは出来なったこと

ザンボ・エース、ザンボット3のメインパイロット神勝平

ザンボット3とその母艦であるキングビアルを運用し、地球人を抹殺するガイゾックと戦うのは、神ファミリーです。神ファミリーは、150年前に地球に移住してきたビアル星人の子孫です。

ビアル星人の母星であるビアル星もガイゾックに滅ぼされました。ザンボット3とキングビアルは、ビアル星人によって作られていた兵器です。

ザンボット3は、頭部と胴体になるザンボ・エース(飛行形態のザンバードに変形可能)と呼ばれるロボットと、胴体と腕部の万能戦車のザンブル、腰と脚部で支援型戦闘機のザンベースの3つのメカが合体してできる巨大ロボットです。

ザンボット3とは、3体合体のこととサンライズのロボットの意味が含まれているようです。ザンボット3の合体は、どことなく同じサンライズの、ガンダムの後に制作した『伝説巨人イデオン』の合体シーンと被ります。

イオン砲は、「バイオニック・コンデンサー」のセリフがあることからイデオンガンの原型ともいうべき兵器です。使用したのは最終回手前の22話の1回だけで、本来は母艦であるキングビアルの武器です。ザンボット3の必殺技は、ムーンアタックで、頭部の三日月からエネルギーを照射する連発可能な技です。

ザンボ・エースには、本編の主人公である12歳の神勝平(CV大山のぶ代)で、ザンブルには勝平のいとこの15歳の神江宇宙太(CV森功至)、ザンベースには、同じくいとこの14歳の神北恵子(CV松尾佳子)がそれぞれ乗り込みます。

ザンブルのパイロット神江宇宙太

10代前半か半ばの少年少女がパイロットをする理由は、ザンボット3を構成する各メカには、若者の反射神経をフィードバックする機能があるからです。

また各パイロットは、催眠学習によって操縦を覚え、恐怖心をマインドコントロールによって抑制されています。ある意味、後の『機動戦士Zガンダム』に登場する「強化人間」のような処置がされているのです。このあたりは、1話や20話で描写されています。

ザンベースのパイロット神北恵子

神ファミリーを指揮するのは、一族の長老で恵子の祖父の神北兵左衛門(CV永井一郎)です。ビアルⅠ世、ビアルⅡ世、ビアルⅢ世が合体して出来る母艦キング・ビアルの指揮は、勝平の兄の神一太郎が担っており、家族ぐるみでガイゾックと戦闘しているわけです。

第1話『ザンボ・エース登場』では、3機のメカは全て揃っていなくて、ザンボ・エースだけでメカ・ブースト(ガイゾックのロボット)と戦います。ザンボ・エースは、ヒーロー側のメカが銃を使ってアクションする日本のアニメで始めてのロボットでした。第3話『ザンボット3出現!』でようやく主役メカザンボット3に合体します。

余談ですが、同じ富野監督の『機動戦士Vガンダム』でも、本来はVガンダムの登場は第4話からの予定でした。時系列を変えて第1話で主役メカVガンダムが登場しましたが、第2話から4話までは、鹵獲したシャッコー(敵側のモビルスーツ)が主役メカとして活躍しています。

当時のロボットアニメや、特撮ではどれだけ戦闘で被害が出ても、なぜかスルーされていました。ザンボット3は、そういった暗黙のタブーに正面から取り組み、神ファミリーは、ガイゾックを呼び寄せたと誤解を受け、地球を守るために戦っても非難を受け続けます。

勝平は、友人の香月(CV古川登志夫)やそのグループからも理解されないことに心を痛めます。ガイゾックによって生活そのものを破壊された人々の怒りの対象が、守ってくれている神ファミリーに向かっていったことが、序盤のバッシングに繋がっています。

ここは、とても重要なことで理不尽な戦闘に巻き込まれたときに、民衆は正確な情報よりも感情の捌け口を探すようになります。ウルトラマンやマジンガーZが戦って被害が拡大しても、文句が出ないほうがおかしいのです。このあたりのリアリティが、単純に子供向けアニメとはいえないストーリーとなっています。

左から恵子、勝平、宇宙太

また、第10話『バンドック現る!』でガイゾックの母艦、バンドックが東京に現われてから、人々はガイゾックの脅威を目の当たりにします。ここから徐々に(ようやくというべきですが)、ガイゾックが問答無用で地球の人類を根絶やしにすることが目的であることが、民衆にも認知されるようになっていきます。

第13話『果てしなき戦いの道』では香月と、第14話『スカーフよ永遠なれ』でガールフレンドのアキとミチとも仲直りした勝平ですが、第17話『星が輝くとき』で、人間自体を時限爆弾にするガイゾックの人間爆弾作戦によって、香月と勝平の友人、林と浜本が犠牲になります。

最初は、人々に被害を与えることに危惧して、カッコ良く去ろうとした浜本ですが、死の直前になって取り乱します。こういう心理的にじわじわとくる演出は、さすがだと思いました。第18話『アキと勝平』では、アキが人間爆弾の犠牲になります。せっかく和解した友人をも、勝平はガイゾックの作戦によって失ってしまうのです。

永井豪の作品である『デビルマン』や『ゲッターロボ』(作画は石川賢)は、原作の過激さは、テレビアニメではマイルドにされていました。1970年代当時、『宇宙戦艦ヤマト』が1974年に、『機動戦士ガンダム』が1979年に放映されるまで、子供向けとして作られることが多かったのです。

ザンボット3は、戦いの中で難民となる人々や、死んでいく仲間を描写させることで、タブー視されていたことに正面から向き合ったのです。

金田伊功の作画とシビアな展開

第16話は典型的な金田パースの作画回

ガンダムのようにキャラクターデザインを担当していた安彦良和が原画を担当していなかったのには理由がありました。当時の安彦良和は、『宇宙戦艦ヤマト』の仕事が忙しかったからです。

しかし、ザンボット3に思い入れのあった安彦良和は作画監督がおかれていないことを懸念していたといいます。同じ時期のサンライズの下請け作品、『超電磁マシーン ボルテスⅤ』には作監がおかれていたことを知って激怒したというエピソードがあります。


確かに、ザンボット3は作画上のミスが多く、作画監督がないことでの弊害はありました。次回作のダイターン3では、その反省から作画監督がおかれるようになったのです。

富野監督自らが、原画を担当した回があったり、青木悠三(ルパン三世などで知られるアニメーター)が1話Bパートを丸々手がけるなどの逸話が残っています。そんな中、光る演出と絵の魅力のある回といえば、天才といわれた金田伊功(かなだよしのり)のスタジオZが参加している5、10、16、22話です。

第10話でのカット

これらの回では、特徴的な構図の金田パース、人物やロボットなどの印象的な動きの金田ポーズ、直線的ではなく、複雑な動き方の金田ビームなどがふんだんに見られます。恵子が少し大人びて色っぽく描かれているのは、金田伊功の好みだと思います。

金田は、間違いなく天才なのですが、絵の個性の強さから作監泣かせといわれていました。ザンボット3では、その才能を遺憾なく発揮しており、金田の代表作の一つとして取り上げられることが多いです。

金田ポーズの青騎士ヘルダイン

特筆すべきは、第20話の『決戦前夜』で、ザンボット3とキングビアルの設計図を国際防衛軍にわたして量産化が計画されていたことです。これは、日本のアニメ史上初の主役メカが量産されるエピソードです(実際に建造できるのは3ヵ月以上かかると劇中でいわれていました)。

そして、第21話の『決戦!神ファミリー』からは、バンドックを追跡したキングビアルが宇宙に上がり、宇宙空間での戦闘が始まるのです。ここで注目したいのは、キングビアルの火力です。ミサイルで弾幕を張ったりレーザー砲でバンドックと撃ち合いをしています。

地上戦闘では、あまり見られなかったイオン砲以外の火力は、宇宙空間だからこそ映えるものでした。バンドックも、追尾型ミサイルや宇宙機雷を用いた遠距離攻撃をしてきます。

第21話の宇宙での戦闘シーン

この戦闘で窮地にたたされたキング・ビアルとザンボット3を救うため、神北兵左衛門と勝平の祖母神梅江が、ビアルⅡ世を分離してバンドックに体当たりをかけます。後のガンダムのスレッガーのビクザムに対する特攻シーンを彷彿させます。

ビアルⅡ世の特攻シーン

この攻撃によって深手を負ったバンドックは、一時後退します。第22話『ブッチャー最後の日』では、香月とミチ、非戦闘員を地球にカプセルを使って地球に降ろします。そこへ、ガイゾックの死の騎士、赤騎士デスカインと青騎士ヘルダインを伴ってバンドックの頭部に乗ったブッチャーが現われます。

ザンボット3を支援するためにビアルⅢ世で戦っていた父の源五郎は、最後のカプセルである、勝平の母花江のカプセルを守るためヘルダインの攻撃を受けます。深手を負った源五郎は、デスカインとヘルダインに特攻をかけ散っていきます。

ビアルⅢ世で体当たりする源五郎

バンドックの頭部を攻撃するため、ビアルⅠ世はイオン砲をザンボット3に射出します。イオンエンジンの出力がキングビアルでないと充分ではないからです。この回で初めてザンボット3がイオン砲を撃ちます

ここでのイオン砲発射シーンは、イデオンガン発射シーンや、エルガイムMk-Ⅱのバスターランチャー、百式のメガ・バズーカ・ランチャーの元祖ともいえるものです。

イオン砲のコネクターを接続してザンボット3のイオンエンジンと直結し、エネルギーを充填させてから発射した荷電粒子ビームは、バンドックの頭部を破壊します。

特攻直前の源五郎の顔やその後の勝平の表情、イオン砲の発射シーンの迫力など第22話の金田の作画は素晴らしいものでした。キャラクターが全体的に大人びて見えるのですが、アニメーターの個性を充分に発揮できた手描きだからこその味が出ています。

衝撃的な最終回と大山のぶ代のアドリブ!

最終話の勝平のセリフは大山のぶ代のアドリブ

ドラえもんで有名な大山のぶ代が神勝平役として声を担当していました。メカ音痴であることからロボットもののオファーを断っていたようなのですが、ザンボット3のストーリーを気に入って参加を決めたといいます。

最終話『燃える宇宙』は、皆殺しの富野という異名の発端となった多大な犠牲の出る回となりました。ブッチャーとバンドックの頭部を破壊したザンボット3とビアルⅠ世ですが、バンドックの胴体とガイゾックの本体が残っていました。

機動戦士ガンダムの第41話は、『光る宇宙』です。エルメスのララァが死亡する回で、ニュータイプの定義がはっきりする重要な回に、ザンボット3の最終話と対になるような題を与えています。

幻覚によってお互いを攻撃させられるザンボット3とビアルⅠ世、ザンボット3の胴体部に攻撃が直撃し、ザンブルのコックピットはコントロールできないほどの被害を受け、宇宙太も深手を負います。イデオンのBメカ魔のコックピットのような演出でした。

このとき受けた傷で正気に戻った宇宙太は、勝平に左上にミサイルを発射することを指示します。勝平には、なにもない空間としか見えていないので、当然ながらためらいます。そこに「もしここで撃たなかったら貴様を呪い殺してやるぞ!」という富野節の極地ともいえるセリフを吐き出し、勝平の撃ったミサイルで洗脳は解けます。

バンドック胴体に特攻する宇宙太と恵子

宇宙太は、おそらくここで死を覚悟していたのだと思います。ザンボット3は、バンドックの本体を攻撃しますが、ビーム攻撃によって手足を失います。宇宙太と恵子は、ザンボ・エースを切り離し、残った2機のイオンエンジンを暴発させることでバンドック胴体を大破させます。

宇宙太と恵子は、若い命を散らしました。勝平は、バンドック本体に乗り込みます。ザンボ・エースの右足に直撃を受け、千代錦(勝平の愛犬)が死亡します(なぜカプセルを使って地球に降ろさなかったのでしょうか?)。

仲間を次々と失い、ボロボロになりながらガイゾックと対峙する勝平には衝撃的な真相が語られます。ガイゾックの本体は、ガイゾック星人によって作られたコンピューター・ドール8号だったのです。

コンピューター・ドールの役目は、宇宙にはびこる危険な生物を抹殺するというものでした。200年前にビアル星人を滅ぼして眠りについていましたが、危険な地球人の存在を察知して目覚めました。

コンピューター・ドール8号は、勝平に問いかけます。「地球の生き物はお互いに争いあい、殺し合う危険な生物だ。お前が、親族を犠牲にしてまで戦って、地球の生き物が感謝してくれるのか?誰が頼んだというのだ」

これに対して勝平は、明確な答えを出せません。神ファミリーは、地球人から迫害を受けて、多大な犠牲を払ってきました。本当にここまでして、戦う必要があったのかどうか、視聴者の方も考えこんでしまう善悪逆転の衝撃的なシーンです。

対峙するザンボ・エースとコンピューター・ドール8号

富野監督は、後に「スポンサーが真っ青になった」と語っています。当時のスポンサーといえば、おもちゃメーカーのクローバーで、ザンボット3とダイターン3のおもちゃの売り上げが好調だったのでガンダムを制作できました。

ダメージの蓄積で崩壊するコンピューター・ドール8号とバンドック胴体は引力にひかれて落下していきます。このときに勝平は叫びます。「う、う、うわー!」という声は、勝平の暗示によって抑えられていた恐怖心が呼び覚まされた瞬間であり、大山のぶ代のアドリブだったようです。

突入角度の問題で、燃え尽きる可能性があり、ビアルⅠ世は勝平を救うためその身を犠牲にして軌道を修正します。ビアルⅠ世の一太郎と、乗組員も全員死亡します。バンドックから脱出したザンボ・エースと勝平は、駿河湾に着水します。夕日を浴びてたたずむザンボ・エースは涙を流しているように見えます。

傷つき、疲れ果てた勝平を膝枕するミチ、それを見守る香月、歓声で勝平をたたえる人々の姿は、果たして救いになったのでしょうか?エンディングテーマ「宇宙の星よ永遠に」の2番が流れる中で、ザンボット3の過酷な戦いは終わります。

粗さもあり作画の質も回によってばらばらですが、有名なバンドのファースト・アルバムのような勢いと荒々しさを感じる出来のアニメです。40年経っても色あせることなく、デジタルリマスターされる価値のあるエポックメイキングな作品の一つといえます。

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