ニュールンベルグ裁判:戦争犯罪に加担した判事達は断罪すべきか?

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Judgment at Nuremberg(邦題ニュールンベルグ裁判)“とは、1961年のハリウッド映画です。最近、CSで放映されていたので、見てみました。3時間の尺の長さを感じさせない脚本と名優たちの熱い演技には、脱帽しました。

ニュールンベルグ裁判について

ニュールンベルグ裁判とは、1945年~1946年に行われたナチスの戦争犯罪に対する国際裁判のことでもあります。ルドルフ・ヘスカール・デーニッツといった大物が裁かれたのは、こちらの方です。

映画で描かれているのは、ニュールンベルグ継続裁判です。1946年から1949年にかけて行われた12の裁判の一つで、1947年3月から同年11月まで8ヵ月にわたって繰り広げられた法務大臣や判事といった法曹界のメンバーに対する裁判でした。

ナチスはユダヤ人の大虐殺(ホロコースト)の他に、優性学に基いたアーリア民族以外の強制断種や人種隔離といった政策などが焦点となっています。ナチスの政権下では、こういった歪んだ人種差別による法がまかり通り、結果として多くの犠牲者が出ました。

監督はスタンリー・クレイマーで、『真昼の決闘』、『招かれざる客』などが代表作です。本作『ニュールンベルグ裁判』は、第34回アカデミー賞の作品賞と監督賞にノミネートされ、優れたプロデューサーに対する賞アービング・G・タルバーグ賞を受賞しました。

弁護士役のマクシミリアン・シェルが主演男優賞を受賞し、脚色賞も受賞しました。ハリウッド業界人の中での最高の栄誉であるゴールデングローブ賞にも輝いている名画です。

法務大臣でワイマール憲法の発案者の一人ともされているエルンスト・ヤニング(バート・ランカスター)や、その他の判事は、ナチス政権下で、人種差別やユダヤ人に対するホロコーストに協力したとして告発されます。

オープニングで、ナチスのシンボルたるハーケンクロイツが破壊され、戦後のドイツの中を一台のメルセデスが走行します。その後部座席に座っている初老のアメリカ人が、主人公であるダン・ヘイウッド最高判事(スペンサー・トレイシー)です。

展開の変化によって浮き出る罪と罰

出典 http://blog2.wowow.co.jp/  ダン・ヘイウッド判事とベルトホルト夫人

ヘイウッドは、アメリカの地方判事で、『誰もやりたがらなかった裁判』を引き受けることにしました。当時の情勢は、ソ連とアメリカは対立つつあり、ドイツ人に恨まれることになる裁判の公判は、判事にとっても非常に難しい案件でした。

序盤は、アメリカの軍人タッド・ローソン大佐(リチャード・ウィドマーク)が検察側としていささか強引な感じでした。それに対して、ハンス・ロルフ(マクシミリアン・シェル)は、やり手のドイツ人弁護士としてローソン大佐の矛盾をつき、裁判を有利に運んでいきます。

エルンスト・ヤニングは、自分を弁護してくれているロルフに対しても、黙して語らず、裁判を静かに見ています。ヤニングは、法曹界でも指折りの学者であり、ロルフはその信奉者でした。

そして、ヘイウッド判事は、ヤニングの著作とワイマール憲法を読み、優れた見識に感銘します。これほどの論文と憲法を作った男が、ナチスに積極的に加担したとは思えなくなります。


そして、ヘイウッドが寄宿している家の元の持ち主である、ベルトホルト夫人(マレーネ・ディートリヒ)と出会い、彼女に惹かれていきます。余談ですが、マレーネ・ディードリヒは、ドイツ映画界からハリウッドに進出した女優です。

マレーネ・ディードリヒは、ヒトラーのお気に入りの女優でしたが、ドイツに戻ることを拒否し、マレーネの出演していた映画はドイツで上映禁止となりました。1960年に収録されたということは、すでに59歳くらいなのですが、その上品な美貌に驚かされます。

ベルトホルト夫人は、夫を先の裁判で死刑にされ、ヤニングを救うために動いています。ヤニングは、夫人の話ではヒトラーとは仲が良くなかったということでした。

この段階で、観客に対して2つの仕掛けがあります。当時のアメリカは、戦勝国であり、いささか強引な裁判をしていたことを印象付けること。もう一つは、ドイツ国民はベルトホルト夫人のようにヤニングに対して同情的であることです。

こうなると、序盤は弁護士のロルフとベルトホルト夫人の方が正しく見え、強引なローソン大佐の印象はよくありません。しかし、中盤から転機が訪れます。

やり手の弁護士 ハンス・ロルフ

手詰まりだったローソン大佐は、とある証人を迎えにいきます。イレーネ・ホフマン・ウォルナー(ジュディ・ガーランド)は、ドイツ人の同胞に恨まれることが解っていたので、当初は裁判で証言することをしぶりますが、ローソン大佐の熱意によってニュールンベルグに向かいます。

そこで、とりあげられたのが、フェルデンシュタイン事件です。ナチス政権下では、アーリア民族と他民族(主にユダヤ人)の情交は禁じられていました。イレーネはアーリア人でありながらユダヤ人と関係した罪に問われましたが、これはユダヤ人を陥れるための裁判でした。

そのときの最高判事が、エルンスト・ヤニングであり、最初から判決は決まっていました。ユダヤ人は死刑となり、当時10代の少女だったイレーネは2年の懲役を科せられます。実際には、2人は年の離れた友人であり男女の関係はありませんでした(親子のような関係だったと推測できます)。

そして、ローソン大佐は自身が立会った戦後の収容所での経験を証言します。そしてホロコーストの実態を記録したフィルムを見せます。そのあまりの凄惨な光景に、裁判所の面々は言葉を失います。多くのユダヤ人を収容所に送るサインをしていたのが、ヤニングを初めとした被告達でした。

そして、ロルフは論旨を変え、当時のドイツ人がホロコーストの実態を知らなかったといいます。そして、新たな証人である当時の家政婦を呼びイレーネとユダヤ人の関係を証言させます。

欧米人なら親しい間柄ならほっぺにキスはあたりまえだし、まだ幼い少女を膝の上で遊ばせるなんてことは、親子のような関係ならよくあることでしょう。

そのあたりは、イレーネも認めていることなので、強引に男女関係にあったとするロルフの方が悪役になってしまっています。ここではっきりとロルフは、間違っていることが解るのです。

見ている方が不快になるほど、イレーネを追求するロルフに厳しく大きな声で、「また同じことを繰り返すつもりかね!」とヤニングが叫びます。ヤニングは、こう続けます。「弁護士に総てまかせて自分は発言しないつもりでいた」と。

ヤニングは、「皆が知らなかったというが、虐殺されたユダヤ人の多くが近所の駅から運ばれるのを我々は見ていた。誰もがナチスの危険性に気付いていながら、一過性のことで生活が豊かになるならと看過していた。誰も正そうとはしなかった」と発言します。

そして、当時の罪を認め同僚判事達の行ったことを告発します。ヤニングのこの証言がきっかけで裁判は、大きく流れが変わるのです。結局ヤニングを初めとした判事達は全員が終身刑となります。

ドイツを去る前にヘイウッド判事は、ヤニングと面会します。ホロコーストの大虐殺のことは、誓って自分は知らなかったのだというヤニングに対して、ヘイウッドは「あなたが無実の人間を処罰したことがきっかけで始まったのだ」といいます。

ヤニングは呆然とし、ヘイウッドは去ります。実際にはこの裁判で終身刑を言い渡されたものは、後に釈放されています。この映画は、ヤニングのような優れた人物でさえ、ナチスに協力してしまい世界史上でも残虐な犯罪に加担してしまったことを鋭く切り込んでいます

今の日本では、安倍政権がナチスと似た手口で独裁をしようとしていますが、この映画を見た後強く反対しなければならないと思いました。公文書の改竄自体が、安倍政権だったからこそ起きたことは明らかで、ヤニングのように潔く自分の罪を安倍にも認めてもらいたいです。

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