真空管の有効活用?ミグ25と耐放射線カメラについて

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今日(2/13)の毎日新聞に、浜松ホトニクスが福島第1原発のデブリ回収用に、真空管を使った耐放射線用カメラを開発したというニュースが載っていました。

アンプだけではない真空管の活用

真空管は、電気回路を増幅、検波、発振などの機能に必要な、ガラスなどの球体のことです。真空管は、内部を真空にして電極を配置した構造により、電子を制御する機能を持っています。1960年代までのテレビや、ラジオ、オーディオなどには真空管が使われていました。

半導体の研究により、トランジスタが1948年に開発されると、様々な機器が小型化できるようになります。そして、1960年代には、集積回路の試作も成功し、徐々に真空管は使われなくなっていくのです。

  • 重く大きいこと
  • 熱電素源が必要なため発熱すること
  • 寿命が短く振動に弱いこと

真空管には、トランジスタやLSIと比較して、上記のような欠点がありました。1970年代にトランジスタが普及してくると、真空管はその地位を奪われることになるのです。今では、暖かみのある音を好むオーディオマニアのアンプや、ギターアンプに使われるのみとなっています。

ミグ25に真空管?驚愕の理由とは?

1976年9月6日、函館空港に1機のソ連の戦闘機が亡命を求めて強行着陸しました。ヴィクトル・べレンコ中尉のMiG-25戦闘機が、アメリカに亡命するために、日本の空港に着陸したのです。これが世にいう『べレンコ中尉亡命事件』です。

ミグ25の最高速度は当時、マッハ3級といわれていました。アメリカの航空機で、マッハ3級といえば、偵察機のSR-71 ブラックバードのみで、ミグ25に対抗するためにF-15イーグルの開発を急いだのです。


そして、ミグ25はアメリカ軍によって過大評価されていました。一説には、アメリカ議会に対して、F-15の開発を納得させるためにわざとMig-25を実際よりも高性能に仕立てたということもありましたが、実際には勝手にビビッていたのだと思います(笑)。

べレンコ中尉のミグ25をアメリカ軍が研究した結果、「なーんだたいしたことないじゃん」と関係者が胸を撫で下ろしたという話が残っています。アメリカ軍はベトナムで散々な目にあっているので仕方ないですが、正直おびえすぎだと思います。べレンコ中尉はアメリカへの亡命を認められました。

装甲材質が、チタン合金ではなくニッケル鋼が使用されていたため、マッハ3に耐えられない機体構造だったことや、迎撃戦闘機として設計されており、機体の運動性能は高くなかったこと、そして電子機器に真空管が大量に使用されていたことが解ったのです。

しかし、後になって真空管を使用していた理由について、諸説出てきました。よく言われているのが、核爆発の際にでる電磁パルス(EMP)に対する真空管の耐久性です。真空管は、その構造上、トランジスタよりEMPの影響を受けにくいのです。

また、ミグ25のレーダーは、600kWもの大出力を誇っており(真空管によるもの)アメリカ軍より電子戦で有利とされています。実際には、ミグ25は、トランジスタが普及する前の1960年代の基本設計なので、真空管が多用されていただけだったのですが、かくも人とは隣の芝生は青く見えるものなのです。

ギターアンプにしか、使われることのなかった真空管が、再びこのような形で世に出るのは皮肉なものです。真空管が放射線に影響されにくいことは、昔から解っていた常識なのですが、これから色々なところに活用されてもらいたいです。

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