対照的なベーシストについて:ビル・ワイマンとジャック・ブルース

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前にドラマーについて書いたので、今回は60年代の対照的なベーシストについて書いてみます。ベースは、ドラムとギターの間で、リズムと低音を支える重要なパートです。いいバンドには、必ず腕のいいベーシストがいますが、非常に目立たない存在でもあります。

目立たないベーシストと目立つベーシストの違いとは?

しかし、ビートルズのポール・マッカートニーや、クリームのジャック・ブルースのように、リード・ボーカルの出来るベーシストは例外的に目立ちます。

ザ・ローリング・ストーンズのBill Wymanは、目立たないベーシストの筆頭といえるでしょう。ミック・ジャガーや、キース・リチャーズのことは知っていても、ビル・ワイマンのことをすぐに思い出す人は少ないでしょう。ベースのプレイは、職人気質で地味でしたが、チャーリー・ワッツのドラミングとは、ぴったりのプレイスタイルでした。

対照的に、クリームといえば、ジンジャー・ベイカー、エリック・クラプトン、そしてJack Bruceとすぐに全メンバーをいえる人が多いです。ベースであるはずのジャック・ブルースですが、派手なベースプレイと、シャウトの効いたリード・ボーカルでオーディエンスを魅了していました。

ビル・ワイマンとジャック・ブルースのプレイスタイル

SGベースを弾くジャック・ブルース

ビル・ワイマンのベースのスタイルは、とてもシンプルでした。ベースは、リズムと低音を支えるものという基本に忠実なベースを弾いていました。

ベースを弾く上で重要な要素として、コードでいうところのルートを弾くというポイントがあります。AコードだとAの音を基本的に出すということです。ギターリフに対して、動かない低音のルートを弾き、リズムを正確に支えるというのは、とても忍耐がいります。

ビルはサイレント・ストーンと呼ばれるほど、寡黙でステージ上で動かないベーシストでした。60年代半ばまで、ベースのネックを過度に立てた状態で弾いています。

ビルのベースはサスティンの短めな、歯切れのいいリズムのベースでした。チャーリー・ワッツとのコンビネーションはさすがで、ここにキース・リチャーズのカッティングが絶妙にからむのが、ストーンズのスタイルです。

ジャック・ブルースは、クリーム時代、インプロビゼーション合戦を仕掛けるほど、よく動くベースを弾いています。ボリュームも大きめで、ベースソロのようなメロディアスなプレイも得意です。

ジャズの影響を受けた即興性のある演奏こそ、ジャック・ブルースのベースプレイの真骨頂でした。また、リードボーカルとしての役割も担い、世界3大ギタリストのエリック・クラプトンに比肩するほどの存在感があったのです。

ストーンズでのビル・ワイマン

ビル・ワイマンは、1962年にストーンズに加入しています。ストーンズは、1963年にメジャーデビューし、1965年のシングル曲”Satisfaction“が世界的に大ヒットするなど本国イギリスのみならずアメリカでも人気のグループとなっていきます。

バンドのリーダーであったブライアン・ジョーンズが、薬物中毒でまともにプレイできなくなってくると、相対的にミックとキースの発言権が上がりました。

レコーディングの際にキースがベースを弾いたり、自殺したブライアン・ジョーンズの代わりに加入したミック・テイラーが弾いたりしていました。特にひどいのは、1972年の”Exile on Main St.“で、アルバムの半数以上の曲をビル以外の人物がベースを担当していました。

ビル・ワイマンは、ストーンズのメンバーの中で最も現実的で慎重な性格でした。しかし、女好きでプレイボーイという側面もあり、何よりプライベートを重視していました。そのため、レコーディングが終わるとさっさと引き上げるなど、ドライにバンドと接していたようです。


バンドに対するフラストレーションが溜まっていたことが、70年代のストーンズのレコーディングでのビルの参加率の低さに繋がったのだと思います。ビル・ワイマンのベースを堪能するならライブ盤の”Love You Live“がおすすめです。

結局、ビルは1992年にストーンズを脱退しています。ローリング・ストーンズは、その後サポートとしてベーシストのダリル・ジョーンズを招聘し、現在も活動を続けています。

クリームでのジャック・ブルース

クリームは1966年にジンジャーベイカーが、エリック・クラプトンと組むために仲の悪かったジャック・ブルースを誘って出来たスリーピースバンドです。

非常に緊張感のあるインプロビゼーション合戦を繰り広げるバンドとして有名で、ジャズの要素とブルースの融合というべきサウンドを構築していました。

同じブルースをベースにしたロックバンドでも、ストーンズはオーソドックスで、モダンなのはクリームという感じがします。これは、ジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーのリズム隊の個性によるものだと思います。

ジャック・ブルースは、作曲も担当していました。クリームは、3人の位置づけは対等で、誰か1人が目立つグループというわけではありませんでしたが、リードボーカルも(たまにクラプトン)担当していたジャックの存在感は大きかったのです。

クリームのおすすめは、3枚目のアルバム”Wheels of Fire“です。後半のライブ演奏は、当時のクリームのライブバンドとしての実力がよく解る名演です。3人がそれぞれ、個性を充分に発揮している様子がよく伝わってきます。

バンドは結局、ジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーの対立が激しくなり、1968年に解散します。短い活動期間でしたが、クリームの及ぼした影響は絶大でした。

ビル・ワイマンとジャック・ブルースの機材について

ビル・ワイマンといえばムスタングベースです。手が小さかったらしいので、ショート・スケールのベースが合っていたんでしょうね。他にはギブソン EB-0だとか、スタインバーカーなども使っていました。

ジャック・ブルースといえば、クリーム時代のSGベースです。正確には、ギブソン EB-3なのですが、SGベースと呼んだ方がしっくりきます。僕も手が大きい方ではないので、ショートスケールのSGベースが欲しいです。

ビルは、長い間ストーンズでプレイし、ジャックは短い間でしたがクリームで強烈な印象を残しました。地味で堅実なプレイと派手で自由なプレイ、バンド内での地位など、対照的な2人でしたが、どちらも素晴らしいプレイヤーです。

ソロアルバム制作のため、ベースを研究しているときに、様々なベーシストを参考にしましたが、ビル・ワイマンのベースはギタリストの僕にとってはいいお手本でした。

ジャック・ブルースのアプローチは凄くカッコ良く、やってみたくもあるのですが、基本がしっかり出来てこそのプレイだと思います。最初はビルを、上達してきたらジャックを参考にするのが一番いいでしょう。

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